はだしのぼくに、ビーチサンダル/u.w.

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2015.08.05 Wednesday ... - / -
#norwegian wood
 昨夜、ノルウェイの青年と会話をした。彼の様子はどこかおかしかった。「何かあったのか」と聞いても、「何もないよ」と答えるばかり。でも、やっぱり何かがおかしかった。しばらく会話していると、決心がついたのか、日曜日の出来事を話してくれた。

「昨日ほどおかしな一日は、長い間経験したことがない。」

 彼は今、オスロの病院に入院している。2ヶ月ほど前に、腎臓移植をしたから。そして、しばらくは安静にしていなければならず、ここ2ヶ月間病院のホテルようなところで生活をしている。病院であることにはかわりなく、彼と同じように入院している人々は、他にも大勢いる。そこで、彼はとある女性と出会った。28歳のベトナム出身女性らしい。いつ出会ったのか、という詳しいことは、いっさい聞いていない。彼は、その女性と日曜日を共に過ごしたという。

「一日中、森の中にいた」と彼は言った。
「散歩でもしていたの?静かな所ならば、話は盛り上がりそうだね。」
「話したり、歩いたり、景色をみたり、何を考えてるのか詮索したり・・・」
「うん」

私は、続きの言葉を待った。しばらく、沈黙が続いた。

「あとは、まぁ、いちゃついたりしたね・・・」

こういう時、どういう返事をすればいいのか、私はまったくわからなかった。

「その後、彼女の部屋で一晩を過ごした。」

私は返事ができない。

「でも、後で彼女に会いにいった時、彼女はいなくなってた。」
「退院したの?」
「いや。」

嫌な沈黙が流れた。入院していた人がいなくなる、ということはどういうことか。考えればすぐにわかる。私は曖昧な返事をして、続きを待った。

「彼女が戻ってくる事を願ってる。結局、僕は彼女が誰なのか、はっきりと知らない。年齢と、国籍と、名前と、新しい腎臓を得たことくらいしか知らない。でも、確かに恋に落ちていたんだ。日曜日には。」
「うん」
「でも、日曜日の夜の記憶が、すっぽりと抜け落ちてるんだ。」
「酔っぱらってたの?」
「いや。」


「もう、彼女の話はよそう。つらいんだ。」
彼はそうして、話にピリオドを打った。

 だけど、彼と話して疑問に思った事があった。彼は、「彼女が戻る事を願っている」と口にした時、"wish"でなく、”hope"という動詞を使った。それまで、彼女が亡くなってしまったのだと解釈していたが、もしかしたら違うのかもしれない。もし、彼女が亡くなっていたら、wishを使っていただろうから。もし生きているのだとしたら、彼女は何故消えてしまったんだろう。同じような病気を抱え、同じように孤独を感じてた二人同士だったはずなのに、彼女は彼のもとを去った。しばらく考えて、「あぁ、そうか」と納得がついた。

「自分と似すぎていたから、恐ろしくなったのか・・・。」
 
ナルキッソスでなければ、自分とよく似た人間とセックスなどできないだろう。もし私だったら、絶対に嫌だ。
 
 私の解釈はどうであれ、彼の中でも彼なりの解釈が存在しているに違いない。私の考えだけれど、彼はきっと日曜日の夜の事を、はっきりと覚えていると思う。覚えているからこそ、月曜日の夜、孤独でつぶれそうになったのだろう。普段は見上げない夜空を見上げて、泣いたのだろう。

「星なんてみても、全然意味はない。自分の事を悲観するだけだ。」

と彼は言った。私は、納得いかない気持ちだったけれど、黙って受け流した。もしかしたら、彼は、今日もノルウェイの森の中を、歩いているのかもしれない。いなくなってしまった女性の影を求めながら。そして、また一人で夜空を見上げるのだろう。その後、一年前と同じように、私に言うのだろう。

「やっぱり、星なんてみたって、どうにもならないじゃないか。」と。
 
2008.05.09 Friday ... comments(0) / -
#the mountain of the night/lua
月が美しいということを、うまく表現できるとは思っていない。月自身の美しさを、いくら言葉で現そうとしても、それは無駄な努力のように感じられる。本物の美しさには、敵いっこない。それなのに、どこか奥底から、なにかがわき上がってくるのがわかる。コポコポとわき上がってきて、私を満たしてしまう。溺れそうだ。

夢想家の夢が花開く夜、私はベランダに一人出て、見える訳のない景色を探す。・・・あぁ、向こうの山は、今日も月明かりに照らされて、深緑の縁を輝かせている。まぶたの裏に見える景色が、ひどく愛しい。手が届けば良いのに。あのてっぺんに・・・私の影が、驚くほどはっきりと濃くて、そのまま飲み込まれるかと思った。地の奥深くまで、光速よりはやく落ちていく。目を開いた瞬間、あの山が目の前にあればいいのにね。また、あの子を抱いて、月夜の風に踊らされたい。月の輪と月明かりの影だけが、存在の証拠。あの夜の記憶が、あの夜の雲のスピードに乗って帰ってくる。おかえり、飛び込んでおいでよ、私の胸へ。でも、きっとまた去ってしまう。私はそれを追わない。舞い上がっていなくなっては、ふと現れるからこそ、愛せる記憶となる。忘れた頃に、また現れて。月の引力に引かれ、頂点の輝きへと向かう。私が背負うのは、大きな夜空の記憶と、影の闇。




なんて泣きそうな冷たい夜。
2007.09.27 Thursday ... comments(0) / -
#優しい瞳に光がさして
  夢のような出来事が続いて、それは嘘のように感じられた。僕は正直少し驚いていたし、心の準備もできていなかった。変化が変化を呼ぶのか、周りに集まってくる出来事は、どこか風変わりなものばかりだった。僕はといえば、多少の驚きはあるが、持ち前の落ち着きでなんとかやりくりができていた。でも、いくら前向きに接していても、どこかに小さな穴があったりする。そうすると、嫌な気持ちが知らず知らずに溢れてくる。それはあまりよくないことだった。僕の中にもそういった悪いことを集める器みたいなものがあって、その中は不満や悪口で少しずつ満たされていった。ひっくり返せばいいものの、あまりにも次から次に色んなことが起きるので、それすら出来ずにいた。だから、自分自身に荒みを感じていたし、それは他人からみても明らかだったんじゃないかと思う。
  
  でも、やっぱり乗り越えなくちゃいけないことではある。それはいくら心が悪い気持ちばかりになっても変わらないこと。甘えてばかりではいけないことは僕が一番よくわかっているわけで、変わらない自分が一番痛いこともわかっている。だから考えた。器がひっくり返せないのなら、割ってしまえばいいって。そう考えた僕は小さい穴を開けた。不安だったけれど、挑戦してみた。そしたら透明な器がまた少しずつ見えてきて、その先にはあの子がみえた。あの子のまぶしそうな顔が見えた。大切なものをまた見つけたような気がして思わず僕は笑った。器はきっと空っぽにはならない。でも、これからはあの子の顔がいつだってみれる。そう思うだけで、安心感に包まれる。後ろから光が射してくる。そして僕はあの子にまた近づく。それこそ、僕が望んだ僕の姿だったんじゃないかって思えるんだ。



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2006.07.14 Friday ... comments(0) / trackbacks(0)
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